「西の魔女が死んだ」を読んで——自分で決めることと、死ぬことと

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梨木香歩の『西の魔女が死んだ』を読みました。
読み終えて、しばらくそのままでいたくなるような本でした。
中学校になじめなくなったまいが、田舎のおばあちゃんのもとで過ごす物語です。薄い本ですが、ページをめくるたびに、どこかで忘れかけていたものが戻ってくるような感覚がありました。
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この物語のテーマは「自分で決めること」です。おばあちゃんはまいに、周りに流されるのではなく、自分の意志をもって選ぶことの大切さを教えていきます。子どもの頃に読みたかったと思いつつ、大人になった今だからこそ響く言葉もたくさんありました。
印象に残っているシーンがいくつかあります。
布団の中でおばあちゃんと話す夜のこと
一番好きなのは、まいとおばあちゃんが布団の中で「死んだらどうなるか」を話すシーンです。
お父さんから「死んだらもう何もわからなくなって、自分というものもなくなるんだ」と言われたまいは、泣きじゃくります。おばあちゃんはその言葉をバカにするでもなく、布団の中でまいの背中をなでながら、自分の信じる死後の世界の話をしてくれる。
正直に言うと、自分の死生観は「死んだら無だ」というものです。今はそれほど怖くもない。でもこの場面を読んでいるうちに、中学生だった頃の自分が戻ってきました。あの頃、死がどれだけ怖かったか。その恐怖を、ずっと心の奥底に押し込めていたのかもしれない、と気がつきました。
そしておばあちゃんの最後の一言。
「さあ、そろそろあきらめなさい」
出典:梨木香歩『西の魔女が死んだ』(楡出版、p.125)
言葉だけ見ると怖い。でも、このおばあちゃんに言われると、不思議なほど安心する。ぐっすり眠れそうです。
意志の力について
おばあちゃんが魔女修行としてまいに伝えるのは、呪文でも薬草でもなく、「早寝早起き・食事・運動・規則正しい生活」というごく当たり前のことです。そして、その根っこにあるのが意志の力だと言います。
なかでも、この言葉が刺さりました。
「最初は何にも変わらないように思います。そしてだんだんに疑いの心や、怠け心、あきらめ、投げやりな気持ちが出てきます。それに打ち勝って、ただ黙々と続けるのです。そうして、もう永久に何も変わらないんじゃないかと思われるころ、ようやく、以前の自分とは違う自分を発見するような出来事が起こるでしょう。」
出典:梨木香歩『西の魔女が死んだ』(楡出版、p.74)
「これは意味があるのか」「続けてどうなるんだ」という疑いの心は、今まさに自分の中にあります。よく言われることではありますが、好きなキャラクターの口から語られると、すっと入ってくる。自分で決めて、やり切る。それだけのことを、また静かに思い直しました。
ミントティーの描写
小説の表現として一番好きなのはここです。
「ミントティーを飲むと、まいはいつもこのお茶はわたしの味方だと思う。慰め、落ち着かせ、励まそうとする意志が感じられると思う。」
出典:梨木香歩『西の魔女が死んだ』(楡出版、p.109)
お茶に「意志が感じられる」という表現。きれいだなと思いました。
空中に咲く蓮の花
最後にもうひとつ、好きな表現を。
「そうだ。あれは空中に咲く蓮の花だ。……人間に魂があるのなら、その魂だけになってあの花の廻りをふわふわと飛遊していられたらどんなに素敵だろう。」
出典:梨木香歩『西の魔女が死んだ』(楡出版、p.187)
魂じゃなくてもいい。自分が虫だったら、とか、植物の目線で眺めたら、とか——自然を見るときの想像の余地が広がるような表現でした。
薄い本なのに、読み終えたあとの重さがある。おばあちゃんは絶対的な存在として描かれていないのも好きで、古臭い価値観を持っていたり、ときにまいに厳しかったりする。それでも、大事に思っている相手だからこそ言う、という場面が随所にあって、その加減がいい。
自分で決めること。黙々と続けること。根本的な解決にこだわりすぎないこと。
読んでよかった本です。
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