もものかんづめ名作「メルヘン翁」徹底解説|あらすじ&感想

はじめに
さくらももこさんが書かれたエッセイ「もものかんづめ」をご存じでしょうか。
1991年に初版が発行されてベストセラーとなり、発行部数はなんと290万部(※2024年1月時点)を誇ります。
今日はそんな「もものかんづめ」の中でも話題を呼んだエッセイである”メルヘン翁”についてご紹介します。
メルヘン翁の概要
さくらさんの高校生時代、同居していたおじいさんが亡くなります。
嫌われていたおじいさんの死に悲しむ人はおらず、通夜から火葬までの様子が淡々と書かれています。
ブラックな笑いが終始漂うエピソードです。
読みどころ
身内が無くなったにも関わらず、葬式から精進落としでお弁当を食べるに至るまで、非常に冷めた視点で描写されています。
アニメちびまる子ちゃんに登場するやさしい友蔵じいさんとは違い、実在したおじいさんは家族から相当嫌われていたようです。
お姉さん
おじいさんが死んだことを、部屋で寝ているお姉さんに伝えるシーンです。
「ジィさんが死んだよ」と私が言ったとたん、姉はバッタのように飛び起きた。「うそっ」と言いつつ、その目は期待と興奮で光り輝いていた。
さくらももこ. もものかんづめ (集英社文庫) (p.49). 株式会社 集英社. Kindle 版.
お母さん
葬式後、おじいさんが”居士”という戒名をもらった後のさくらさんと母親の会話です。
私が、「立派な戒名もらってヨカッタねえ」と母に言うと、彼女は、「あたしゃ、生きてるうちにいい目に遭えりゃ、居士でもドジでもなんでもいいよ」と言いながら、葬式まんじゅうをバクバク食べ始めた。
さくらももこ. もものかんづめ (集英社文庫) (p.56). 株式会社 集英社. Kindle 版.
さくらさん本人
もちろん作者であるさくらさん自身も、おじいさんを嫌っていました。火葬場でもいたってクールです。
霊柩車が火葬場に着き、ジィさんの火葬が始まった。一昨日の夕飯は、平気な顔して食べていたジィさんが、今日には焼かれているなんて、焼き場の煙突も御存じない。私は待ち合い室でジュースをゴクゴク飲みながら、「百まで生きる」と言ってたジィさんを思い出し、もしも本当に彼が百まで生きてしまったら、私は一体いくつになっていただろう、と逆算したりして暇をつぶした。
さくらももこ. もものかんづめ (集英社文庫) (p.55). 株式会社 集英社. Kindle 版.
おじいさんの死に対して、一貫して冷めた態度を貫く家族たち…。
その様子を冷静な視点で描写するさくらさんの文章に、ただただ圧倒されます。
また、なぜこのエッセイのタイトルが”メルヘン翁”なのか…。
その真相はぜひ読んで確認していただきたいです。
Amazon.co.jp: もものかんづめ (集英社文庫) eBook : さくらももこ: 本
ちょっと裏話
“メルヘン翁”でえがかれるおじいさんは家族から嫌悪されていましたが、
アニメ・漫画に登場する優しい友蔵じいさんは、さくらさんの理想のおじいさん像とのことです。
私は爺さんの事は好きでなかったが、自分の描いている漫画に出てくる爺さんは好きである。(中略)「ちびまる子ちゃん」に出てくる爺さんが、まる子をかわいがるのは、私の憧れと理想とまる子への想い入れが混じっているのだと思う。
さくらももこ. もものかんづめ (集英社文庫) (p.161). 株式会社 集英社. Kindle 版.
うちにじいさんはいましたがこんなにいいじいさんじゃなかったですね 本当は。とんでもないイジワルじじいでしたが、まる子に登場しているじいさんは、私の理想も含まれているのでしょう。痴呆ぎみという点だけは一緒でした。
ちびまるこちゃん🄫 7巻 (p126)
余談ですが、漫画ちびまる子ちゃんのこういうおまけコーナーでは、
さくらさんの手書きの文章が読めます。
丸みのある文字で書かれているさくらさんの文章を読むのは、なかなか乙なものです。
Amazon.co.jp: ちびまる子ちゃん 7 (りぼんマスコットコミックス) : さくら ももこ: 本
まとめ
今回はさくらももこさんの代表作「もものかんづめ」より、
特に話題を呼んだ”メルヘン翁”を紹介しました。
その他にも、どこか冷めた、毒気の多い文章が特徴のエッセイが多いのでぜひ読んで欲しいです。