さくらももこ「ひろ子の揉め事」を読んで…意味なしギャンブルの魅力と怖さ

意味なしギャンブル_アイキャッチ

人々はみな、意味なしギャンブルに惹かれる

人は『意味なしギャンブル』に惹かれる。
ハイリスク・ノーリターン。
勝てば達成感が得られるが手元には何も残らない。
負けると「自分は何をやっているんだ…」という虚無感のみが心に募る。

さくらももこ「ひろ子の揉め事」 あらすじ

さくらももこさんのエッセイ集『たいのおかしら』に収録されている「ひろ子の揉め事」を読んだ。

さくらさんが街中を自転車で走らせていると、マンションの前で若い女二人が男一人を取り囲んで叫んでいた。
「ひろ子がかわいそうでしょ」
どうやら、ひろ子という女の子が浮気をされ、女友達二人が男を糾弾しているようだ。
他人の揉め事を面白がって「青春青春」と言って笑い、その場を去るさくらさん。
もう二度と会うことはないだろうと思っていたが、
運の悪いことに、この後2回もこの3人と出会ってしまう…

とまあ、ざっくり言えば以上のエピソードだ。

さくらももこさんも陥る『意味なしギャンブル』の魅力

この話を読んで思った。
「ああ、これは『意味なしギャンブル』だな」

と。

さくらさんは、この男女3人とは二度と会わないだろうと高を括ってしまったがゆえに、
「青春青春」
と笑ってしまったのだ。


この行為、相手3人に不信がられるだけでまったく無意味な行為だ。
この後会うことがなくても、メリットなし。
会ってしまうと気まずいというデメリットがある。


つまり、さくらさんのこの行為は『意味なしギャンブル』だ。

友人も『意味なしギャンブル』にハマってしまった

ここからは私の話。


だいぶ昔のことだが、
高校時代の友人たちと飲んでいたときのこと。

胃腸の弱い友人は、
“腹を下したときに屁をこく”
というギャンブルにハマっていることを
安い居酒屋で得々と語ってくれた。

このギャンブル、「勝っても’実’が出なくて良かった」という達成感が得られるだけだ。
彼いわく、腹を下している最中の屁の臭さは尋常なものではなく、
屁の宿主である自分でも耐えられないものらしい。
果たしてこれは本当に勝ったことになるのだろうか。

意味なしギャンブルに負けた代償

ギャンブルに負けた時は、言わずもがな悲惨だ。
まず自尊心が壊滅状態になる。
大の大人が、つまらないギャンブルをしたばかりに漏らしてしまったのだから当然だ。

ただ、自尊心は時間が癒してくれる。
いつか笑って思い出せる日が来るだろうと気持ちを切り替えることだって出来る。

ただ、己の下半身は時が経つのを待つだけでは解決できない。
汚れた下着をどうにかしなくてはいけない。
被害度合いによっては(手洗いという)救出が可能だが、
「そもそもこんなギャンブルに手を出さなければ、こんなことをしなくて良かったのに…」
という思いを抱きながら、ケツ丸出しでおこなう救出作業は、自身のメンタルを打ち砕くこと必至だ。

ギャンブルに負けて現実逃避した友人…残念な結末

彼の話によれば数日前にギャンブルに負けた際、救出作業を諦めてタンスにそのまましまったらしい。
しかもその話をしている時点で、’実’がこびり付いた可哀そうな下着はそのままタンスに放置されているとのこと。


その絶望的な衛生観念の低さに、私は死ぬほど笑い転げた。

ウケたことに気をよくした彼は、
私に語ってくれたことをSNSにも上げた。


その後、’実’が付いた下着を家族共用のタンスにしまっていることが妹にばれ、
家族全員から叱責を受けたらしい。
こんなにバカバカしい理由で開催される家族会議も、そうないだろう。

たいのおかしら (集英社文庫)

新品価格
¥484から
(2025/6/1 16:21時点)

ひろ子の揉め事│浮気男を斬るさくらももこの痛快エッセイ | より笑う人生